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幸せの教室   

予告編を観る限り、大体予想出来る様な内容だけど、予想を大幅に裏切ってくれました!

幸せの教室
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公式サイト
解説:トム・ハンクスが『すべてをあなたに』以来、久々に監督、脚本、主演を務め、リストラから気持ちを切り替え通い始めた大学で運命を変える女性に出会う中年男性を描くヒューマン・ドラマ。大学を卒業していないがために仕事をクビになる男にトムがふんし、教えることへの熱意をなくした教師をジュリア・ロバーツが演じる。『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のタラジ・P・ヘンソンや『ジャッキー・ブラウン』のパム・グリアなど多彩な俳優陣が共演。トムが、自身のイメージにぴったりの心が温まるストーリーで観る者を魅了する。
あらすじ:ラリー・クラウン(トム・ハンクス)は、大学を出ていないという理由から長きにわたって勤務してきたスーパーをリストラされてしまう。その後、隣に住む夫婦の勧めで地元の大学に通うことに。大学での新生活に希望を抱くラリーだったが、ラリーを教える教師のメルセデス(ジュリア・ロバーツ)は仕事への情熱を失っていた。しかし、そんな二人の出会いがお互いの人生を大きく変えていく。

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トム・ハンクス
「すべてをあなたに」

ユナイテッド・シネマとしまえんで観て来ました。3本観ましたが残り2本は明日以降に更新します。

僕が、どういう予想を立ててたかと言うと、中年の恋愛映画っぽいのでメチャクチャ面白い映画だとは思わないけど、名優同士の絡みなので無難な仕上がりだろうし、おっさんが若者に交じって学校に行き直すという設定が面白そうだなーと思ってたんです。タイミングが合えば、一応、劇場で観ようかな~くらいには期待してました。

けど、この作品…

予告編の想像をはるかに下回る内容で、今年観た新作の中でワースト級に面白く無かったです。

前日に、「すべてをあなたに」を鑑賞した時に、嫌な予感はしたんですよ。いや、ネット検索で、「すべてをあなたに」と言うタイトルを観た時に、嫌な予感がしましたけど、これは邦題を付けた人がおかしいだけの可能性もあるからググってジャケを観たんですけど、その時点でもう好きじゃないなぁと思いました。でも、鑑賞してみなきゃわからないですからね。

それで、「すべてをあなたに」を観終わって、これは好きじゃないなぁと思って、レビューとか読むと意外にも好評価で、驚いたんですが、今作に至っては、みんなのレビューも悪いので安心しましたよ。

今回も項目で分けて書いて行きます。
①トム・ハンクス監督の作家性を検証
②あの若者達は…
③ジュリア・ロバーツ演じる女教師が魅力的じゃなかった
④まとめ

今回は、ネタバレありますけど、別に予告編で想像出来る以上の事は、全く起らないので、関係無いと思いますよ。


①トム・ハンクス監督の作家性を検証

まず、トム・ハンクス監督作品の映画は、まだ2本しか無い(テレビドラマとかはあるみたいです)ので、2本で判断するのは危険ですけど、あまりにもはっきりした共通点がありました。
1、主人公が、周りにチヤホヤされている
2、主人公のキャラがぼんやりしてどういう人かわからないんけど、登場人物に「彼はイイ人」と言わせる
3、主人公が、一般的な範囲内しか努力をしてないのに、物事が異常に上手く行く
4、主人公を脅かす様なライバルなどは、この世界に存在しない
5、ヒロインが、主人公を好きになるのに理由は要らない。なぜならそういうものだからである
6、ヒロインには、元々彼氏及び旦那がいる
7、ヒロインが、やたらキスに重きを置いている
こんな所でしょうか。

「すべてをあなたに」に関しては、主人公達のバンドの『すべてをあなたに』という曲が、話の中で60年代に大ヒットする程の曲って事で、実際にその曲を流すんですが、まぁギリギリ許容の範囲の説得力があるくらいの曲だとは思いました。僕は、別にピンと来ないですし、音楽は好みの部分が大きいと思うけど、それでも60年代ならアリなのか~?と思う様にして観ました。ただ、その曲を何回も何回も歌うんで、僕は心底疲れましたけど。
ただ、それ一発でとんでもないスターにのし上がって行くのは、納得出来なかったですよ。しかも元々スローな曲をドラムがテンポアップしたら盛り上がったと言うビートルズの逸話へのオマージュなのかどうか知りませんけど。
確かに、ミュージシャンは一曲でスターになれるのかも知れ無いけど、全然、普通以上の努力描写が無いし、ただの天才か運が良いだけにしか見えなくて、あんまり応援出来ないんですよ。

そして、今作もやっぱりそうで、カレッジで普通に授業受けて、若者達の遊びに付き合って、確かに、一人で勉強してる描写は、ちょっとだけありますけど、他は、若者と遊んだり、先生とイチャ付いたり、授業中にメールしたりしてるけど、最終的に演説も上手くなって、先生との恋愛も成就してヒャッホーイ!と言う、勝手にして下さい。としか言いようが無いですね。

どちらの作品にも、ちょっとライバルになるのかな?と思わせる存在は出て来るんですけど、全然そんな展開になりません。「幸せの教室」だとタイラ(ググ・バサ=ロー)の彼氏と一世一代の対決シーンとかあるのかと思ってたら、全然無くて。後、クラスメイトに、先生を茶化す生徒やら黒人、アジア人とかいて、おばちゃんとかライバルにならなくても、皆で衝突したりそれを機に仲良くなったりするのかと思ったら、そんな事も無く、最初からみんなおっさんのラリー(トム・ハンクス)を受け入れてますよ。

一方のヒロインも、どちらの作品も最終的に、主人公とキスをするんですけど、そもそも好きになった理由がわからないですよ。元々、どっちも彼氏、旦那がいるけど、そこと上手く行かなくなる描写もふんわりしてるんで、納得し辛いんですけど、主人公が好きだったという展開は、もっとわからなくて、もうこれは、ヒロインは主人公を好きになるもんだと決まってるから!と言う哲学があるとしか思えませんよ。「幸せの教室」に関しては、恋愛映画でもあるのに、そこを省略してどーする!と言いたくもなりますけど。

それで、どっちのヒロインもやたらキスについて、重く考えてて、「すべてをあなたに」では、やたら彼女が「あのキスはウソだったの?」とか言ってて笑いましたよ。

「すべてをあなたに」は、ここで強引にまとめますけど、最初にラジオで自分達の曲が流れた時の、はしゃぎっぷりが異常で笑えた部分以外、僕は、ぶっちゃけ楽しく無かったですね。ただ、珍味として、たまにこういうのもアリな気もします。


②あの若者達は…

これは、おっさんが若者に交じって、学校に通う話なんで、若者とおっさんのギャップの笑いとか、それによって軋轢が生まれたりして、お互いに良い所、悪い所に気付いて成長したりする話かと思ってたんですけど、若者がいきなりトム・ハンクスを受け入れちゃっいます。
むしろ積極的に、タイラというかわいい女の子が授業中にメールをしたりします。(ここで、メールを見たトム・ハンクスが携帯を没収されると言う、もう何千回見たかわからないギャグが2~3回ありますが、もうそんなのは目を瞑ります)
彼女が、一体このおっさんの何を気に行ったのかわかりませんけど、とにかく彼女に気に入られるんです。
そして、彼女の仲間に入るんですけど、そもそもあいつらなんなんだろう?と思うんですよ。
スクーターで暴走族っぽい事してるけど、今アメリカの若者に流行ってるんですか?アメリカで流行ってるんなら謝りますけど、若者文化をわかった風に描いてるつもりかも知れないけど、それがぶっちゃけダサい事になってますよ。

最初のタイラが「おじさん元々警察官?」「違うけど何で?」「シャツインしてるから」とかは、まだ笑えましたけど、そういうギャグがドンドン来ると思ってたらそんな無くて、途中で若者に髪を切ってもらう描写があるけど、ビフォア・アフターがそんなに変わらなかったのには、ガッカリしました。今、どういう髪型が流行ってるのか僕はわかりませんけど、あそこは、モヒカンになって出て来るとか金髪になってて、困ったなぁみたいにすれば、笑いになったんじゃないですかね。ベタですけど。

おっさん側もおっさん側で、若者に一切、抵抗しなくて、すぐに何でも受け入れるんですよ。もう少し、大人としての威厳を見せて、その時は若者にウザがられるけど、後で若者もおっさんの言ってた事に気付いて、成長するとかそういう話にすれば、ちょっとは感動出来たんじゃないかなぁと思うんですけどね。最初から最後まで甘やかしあってるだけなんで、若者と絡んでる部分が面白くなりそうで、全然ならなかったです。

ただ、もしかしたらアメリカのこういうカレッジには、中年が通う事も珍しくないのかも知れないので、そこは最初から狙って無いとも考えられます。(しかし、あんな簡単に受け入れられるかな?)


③ジュリア・ロバーツ演じる女教師が魅力的じゃなかった

ここが、この映画で一番問題だと思うんですけど、ヒロインが全然、魅力的じゃなかったですね。別に、ジュリア・ロバーツが綺麗じゃないとか、そういう意味じゃないですよ。
そもそも、主人公のトム・ハンクスを好きになる理由もよくわからないし、旦那とのケンカもしょうもないんですよ。あれは、ただの「こどものけんか」ですよ。別に、子供っぽいケンカでもいいんですけど、一応、教師と小説家なんだから貧乳とかアダルトサイトを見てるからだけじゃなくて、深みのあるケンカをすると思うんですよね。例えば、「おとなのけんか」みたいに。

だから先生には見えないし、特に授業も生徒に何かをさせるばかりで、何かを教えてる場面が極端に無いから、ただ、旦那と文字通りの痴話喧嘩をしてるか、パム・グリアと世間話をしてるか、トム・ハンクスと恋愛ごっこをしてるかなんで、特に知的にも見えないし、旦那が小説を書かずにアダルトサイトばかり見てるから怒るって、お前バカじゃねーの?としか思えないんですよ。
そんな姿勢なら、そもそも、小説家みたいな奴と結婚すんじゃねーよと思いますよ。
この痴話喧嘩自体はきっかけなんでしょうけど、もう少し2人がなぜこうなったのか、描いて欲しかったですよ。

それで、この映画「教育」の映画でもあると思うんですけど、「17歳の肖像」や、「プレシャス」みたいに、勉強ってやっぱり大切だよね。とか、特に思わせてくれませんよ。そこの部分は、ほとんど描かれず、いきなり主人公は頭がよくなった印象です。


④まとめ

ただ、色々と書いて来ましたけど、トム・ハンクス監督は、現在のアメリカの不景気、リストラされたおじさん達に勇気を与えたかったんじゃないかと思うんです。
そう考えると良い人だとは、思うんですけど、いかんせん起こってる事が、そんなに上手く行けば世話ねーよ!と言う話ばかりなんですよね。
この作品を観たおじさんが、このファンタジー世界を信じて、会社を辞めて学校に行って、若者から煙たがられ、美しい女教師もおらず、という状況になったらどうするんですか?
まぁ、そんな人はいないでしょうけど。

ただ、それでも冒頭のリストラ描写は酷いと思いました。あんなふざけた感じで、悪ノリで人の人生を左右しちゃいけませんよ。「マイレージ、マイライフ」に描かれてる様な仕事が、アメリカでは実際に存在する程、繊細な問題なのに。
そこは、コメディだからって言うのかも知れませんけど、本当に困って自殺する人もいるのに、笑えないですよ。コメディのレベル的にも幼稚なので、ブラックジョークになってないと思います。
「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」も、冒頭似てますが、まだあれは左遷だし、ドンドン上の上司が出て来て、同じ台詞を言うとか、同僚達の反応とか見せ方自体が面白いので、ブラックジョークとして流せるんですけどね。
別に、道徳的にとかだけじゃなくて、それによって、物語のリアリティが一気に無くなるという面もあると思います。

とにかく「幸せの教室」は、あり得な過ぎて、どうでも良い(なんならちょっとイラっとする)全てがユルユルの作品でした。

by eigasirouto | 2012-05-19 02:21 | 新作映画(2012)

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