桐島、部活やめるってよ   

8/24に、バルト9で鑑賞しました。先月観たのに、今頃になってしまいました。

桐島、部活やめるってよ
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公式サイト
解説: 早稲田大学在学中に第22回小説すばる新人賞を受賞した朝井リョウのデビュー作を映画化した青春群像劇。学校一の人気者である男子生徒・桐島が部活をやめたことから、少しずつ校内の微妙な人間関係に波紋が広がっていくさまを描く。学校生活に潜む不穏な空気感を巧みにあぶり出したのは、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の吉田大八監督。クラスでは目立たず地味な存在の主人公に神木隆之介がふんするほか、『告白』の橋本愛、『SAYURI』の大後寿々花らが共演する。
あらすじ: とある田舎町の県立高校映画部に所属する前田涼也(神木隆之介)は、クラスの中では地味で目立たないものの、映画に対する情熱が人一倍強い人物だった。そんな彼の学校の生徒たちは、金曜日の放課後、いつもと変わらず部活に励み、一方暇を持て余す帰宅部がバスケに興じるなど、それぞれの日常を過ごしていた。ある日、学校で一番人気があるバレー部のキャプテン桐島が退部。それをきっかけに、各部やクラスの人間関係に動揺が広がり始めていく。

観てから結構な時間経っちゃってますけど、これまた素晴らしい作品でした!とにかく高校時代を思い出して、観てる間に高校時代の自分を見てる様な、そして対話してる感覚になって、また同じような友達を思い出したり、恋愛を思い出したりして、楽しいやら恥ずかしいやら悲しいやら…悲喜こもごもに目の前に再現される感覚で、こんなの中々体験出来ないよ…と思いながら観てました。

原作は、未読なので映画の事しか書けませんけど、とにかく映画として非常に優れていたのではないかと思います。また吉田大八監督の作品は初見だったのですが、過去作もタイトルは知ってるし、いずれ観ようかな?と思ってましたので、これを機に全部観たくなりましたね。とにかく人物配置がバッチリで、それぞれの役と役者の顔がバッチリ合ってるし、この役者達の演技アンサンブルも素晴らしかったです。

この作品の特徴として、基本、高校を卒業した人であれば、どんな立場だった人でも、まぁ当てはまる人物がいると思います。ただ、男子高や女子高出身の人はどうなのかちょっとわかりませんけど、でも、学校内のヒエラルキーみたいなものは、どこにでも存在すると思いますから、その辺は理解出来るのでは無いでしょうか?

とりあえず、色んな立場の視点から物語は語られていくんですが、タイトル通り、桐島という男子生徒が、バレー部を辞めて、学校にも来なくなり、誰も連絡が取れなくなる。と言う所から物語は始まるし、基本的に、〝桐島が不在である〟と言う事が物語を引っ張ります。桐島とは、この学校での存在感は凄いらしく、ヒエラルキーの頂点に君臨している、言わば王様であり、他の生徒からすれば、彼との関係にアイデンティティを確立している様子です。
ある者は、彼女として
ある者は、親友として
ある者は、その親友の彼女として
ある者は、仲間であるとイケてるから
ある者は、部活仲間として
とにかく、桐島の不在は彼らに動揺を与え、混乱を招いています。要するに、拠り所を無くしてしまうのです。

しかし、その一方で、学園内には、桐島がいようがいまいが全く関係無い人達もいます。それが映画部の前田(神木隆之介)達や、吹奏楽部の沢島(大後寿々花)などです。学園内のヒエラルキーの最下層(これは世間が勝手に決め付けてるだけで、本人達にしてみれば、そんなピラミッドに入っても無いでしょうが)に当たる人達です。そもそも桐島がいても何ら恩恵を受けてる訳でも無いですから。

で、この前田と武文(前野朋哉)の映画部童貞ボンクラコンビが観てて、楽しくもありちょっと切なくもあって。周りから見れば、同じ映画オタクですけど、よくよく見ると二人は映画が好きってだけで、結構性格は違うなと思いましたね。前田に比べて武文は幼いのか、無自覚なのか、強いのか、あまり周りを気にしてませんが、前田は割と周りを気にしてると言うか、好きなものは好きなんだけど、ちょっと自分がイケてない位置にいるなぁと言う自覚はありそうな感じがしましたね。本当に、今にして思えば笑止千万ですが、こいつといるとスゲー楽しいんだけど、ダサいから一緒に遊んでると何かバカにされて、一緒に嫌われるかも…とかで、ちょっと冷たく扱ったりした事が中学高校の時の僕はあります。前田はそんな事しませんけど、そういう自覚はありそうだな。と映画観てて思いましたね。一方の武文は、そういうイケてる側をバカにしてて、やっぱりこういう人の方が強いし、後々、大物になりそうな予感はしましたね。こんな彼らは、本当に映画大好きで、ジョージ・A・ロメロタランティーノが大好きで、映画秘宝をこよなく愛してて、非常に好感が持てました。映画部の顧問の先生は、自分達の半径1メートルの事を描きなさいと言って、青春恋愛映画を描かせようとするのですが、本人達は、どうしてもゾンビ映画が撮りたい!と主張します。そして、先生を無視してゾンビ映画を撮る事になります。しかし、彼らは先生に反抗してるけど、それでいて先生の言う事を聞いています。なぜなら彼らの半径1メートルには、恋愛なんかより、生きにくい世界でそれでも生きていかなければならない、学園でいるのかいないのかわからない存在、つまり自分達はゾンビの様な存在な訳です。だから彼らがゾンビ映画を撮る事は、必然であるし、すごく正しいのです。学生時代にオタクだったりイケて無かった人達は、彼らに感情移入出来るのではないでしょうか?

そんな彼らの対極に存在するのが、イケてるグループです。まず、イケてる女子4人組がいるのですが、その中の一人は、不在になった桐島の彼女、梨紗(山本美月)で、わかりやすく言えば、学園のマドンナ的な存在なのでしょう。しかし、そんな彼女も桐島の不在でかなりまいってしまってます。それで、高校時代とか女子のイケてるグループとか見てると皆、同じ様な性格で思考してるんだろうな。って思ってましたけど、4人が4人共に全然、違うんですよね。それは当り前の事だけど、当時はそういう想像力や経験が足りなくて、あのグループに属してるから、こういう人だ。的な偏見はあったかなぁと思います。で、その梨紗の親友である沙奈(松岡茉優)は、梨紗といる事で、自分がイケてるグループにいる事に自信を持ててる感じの女で、この映画で最も嫌な人物でした。恐らく、自分に自信が無いんでしょうね。この役を演じた松岡茉優さんの嫌な人の演技は、素晴らしかったです。残りのかすみ(橋本愛)と実果(清水くるみ)は、先に上げた2人より、やや地味目で、バトミントン部にも所属していて、帰宅部の梨紗や沙奈より、模範的生徒であります。しかも梨紗や沙奈と仲良くしつつも、「あの人達に真面目な話しても、しょーがない」(by実果)と本当に信頼出来る友達じゃ無さそうで、とりあえず、今は仲良くしてる感じです。更に、実果はかすみに対しても、バトミントンの上手さでジェラスしてたりします。とにかく思春期の色んな立場の複雑さをこれでもか!と描いてるのです。一方のかすみは、全くイケてない前田達を皆がバカにしてる時も、一人だけ笑って無かったりして、イイ子だなぁと思わせますが、どうやら中学時代は前田とも仲良く話してたみたいで。こういう人間関係の変化もわかるなぁと。かすみは僕と同じ様に、イケてない人を排除しようとしてしまったんですね…。

一方、男子のイケてるグループは3人組です。元々は、桐島含めてこちらも4人組だったんでしょう。帰宅部のやる気無さげな2人と桐島の親友で野球部をサボり中の宏樹(東出昌大)で、イケてる女子グループと教室で絡んでます。それでいつも放課後に桐島をバスケしながら待ってるのですが、本当に、目的も無くダラダラしてる感じ「部活やってる人達の事どう思う?」とか下世話な話したりで、こういう高校時代を過ごした人も多いんじゃないかと思います。でも、チュートリアルの得意さん似の宏樹だけは、ちょっと雰囲気違ってて、その自由に適当に生きる高校ライフを心底楽しんで無い様子で、やっぱり野球も気になるなぁ的な状態です。なんか、真面目に嫌気して、桐島とよろしくやりたかったんだけど、桐島がいなくて、自分が無くなった感が満載です。彼は、さっき言った一番嫌な女である沙奈と付き合ってるんですが、それも好きで付き合ってる様に全然、思えないですね。桐島の彼女の友達だから付き合ってる感じです。なんか、運動神経も抜群なのに、やる気が無いというか、自分でも自分がどうしたいのか、わからないといった感じでしょうか。

そんな宏樹に思いを寄せるのが、文化系女子代表、吹奏楽部の沢島(大後寿々花)で、特に何も出来ないけど、屋上でトランペットの練習をしてるフリをして、下でバスケをしてる宏樹を見てると言う、健気な彼女に胸がズキューンとなりましたね。そんな彼女と映画部の場所取り合戦は、全部面白かったです。彼女も桐島がいなくなった事はあまり関係無いですけど、桐島不在によりイケてるグループの動きに支障が出た為、間接的に影響を受けた人物と言えるでしょうか。

そして、これまで桐島に影響を受けた人達は、ある意味では勝手に困ってろよとも思えるくらいの悩みですが、最も影響を受けてしまったのは、当然バレー部の連中です。何やら桐島は県選抜か何かに選ばれる程の選手だったみたいで、桐島がいるから強かったっぽいです。そんなエースがいなくなったら、どれだけ大変か想像に難くないですよね。彼らもまた桐島の恩恵を受けていたわけです。だからキャプテンはイライラして、桐島の彼女である梨紗に詰め寄ったりします。一方で、桐島がいなくなった事で、代わりにレギュラーになる選手も出て来る訳ですが、当然、桐島の様に上手く出来なくて、ビシビシしごかれます。彼にとってこれは良い事なのか悪い事なのか、判断は難しい所ですが、チャンスと言えばチャンスですからね。ある意味で、桐島不在の影響が一番ある人物かも知れませんね。そんな彼をバトミントン部であまり上手く無い「あの人達に真面目な話しても、しょーがない」発言でお馴染みの実果が気にかける所とかも、ああ、もう青春だなぁと強く感じて、胸が熱くなりましたよ。それで時々、バレーのシーンが入るんですが、そのバレー描写が非常にリアルで素晴らしかったと思いますね。

そして、ラストでこの様々な生徒達が、一気に絡み合います。それも最高の形で。そして、この群像劇の本当の主役が誰であったのか、最後の最後にわかります。その主人公が成長の片鱗を見せて、突然、物語は幕を閉じるのです。で、多くの人が「よくわからなかった」と言ってましたが、その意見もわからなくは無いです。僕の中で、こうだったのかなって解釈はありますけど、答えはそれぞれに考える様に作られてるんだと思います。ラストの絵とそれまでの会話でそれぞれが何を思うのか?何を受け取るのか?それが大事な映画です。そんな全部わかりやすい説明してくれる映画ばかり観てる人の中には、怒ってる人もいるみたいですが、空白を自分で埋めるのが、とても映画は重要だと思いますし、そっちの方がより心に残りますよね。

最後にネタバレになるから、この下の文章は観て無い方は読み飛ばして欲しいですけど…






桐島って、ただのマクガフィンでしたね。物語が進むにつれて薄々気づきましたけどね。桐島の退部の理由を言わないからわからないとか言ってる人も多いんでしょうね。それで怒ってもしょうがないですよ。だって、それで物語を引っ張るのだけが目的なんですからね。でも、それまで非常に楽しかったでしょ?って言いたいですね。
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by eigasirouto | 2012-09-05 01:15 | 新作映画(2012)

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