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山椒大夫   

初の溝口健二監督作品です。このブログで一番古い映画は、「アラビアのロレンス」の1962年の映画ですが、それより古い1954年の映画です。

山椒大夫
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解説:森鴎外の同名小説を、八尋不二と依田義賢が共同で脚色し、溝口健二がメガホンをとった文芸作品。特に美術と撮影はレベルが高く、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した。美しいラストシーンは、ゴダールが「気狂いピエロ」において引用したことでも知られる。
平安時代末期、農民を救うため将軍にたてついた平正氏が左遷された。妻の玉木、娘の安寿と息子の厨子王は越後を旅している途中、人買いにだまされ離ればなれになってしまう。玉木は佐渡に、安寿と厨子王は丹後の山椒大夫に奴隷として売られた。きょうだいはそれから十年もの間、奴隷としての生活を続けるが、ついに意を決して逃げ出すことにする。しかし追っ手に迫られ、安寿は厨子王を逃すため池に身を投げるのだった。

1954年と言えば、58年前ですから僕の父親ですらまだ3歳の頃の映画です。
そんな古い映画を今も観れると言うのは、嬉しい事ですね。

溝口健二監督は、黒澤明監督、小津安二郎監督、成瀬巳喜男監督と共に(この中では一番年上)日本映画の巨匠であり、世界的にも評価されてるみたいで、「グッドフェローズ」で紹介した様に、マーティン・スコセッシ監督が、映画監督志望の若者向けに、外国映画39本を推薦してる中で、溝口監督の今作と「雨月物語」を推薦しており、更に、フランスのジャン=リュック・ゴダールも、「好きな監督を3人挙げると?」という質問に、「ミゾグチ、ミゾグチ、ミゾグチ」と答え、墓参までしたみたいです。他にも、僕が最近読んだ「シネマ頭脳」でも、今作をオススメしていました。更に更に、「SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」入江悠監督が、『僕は溝口健二の「近松物語」が好きで。』と、いとうせいこうさんとのトークショーでも、言及されてまして、こうなってくると僕的には、溝口監督の作品をどうしても観たくなりますよ。また1シーン1カットの長回しなど、溝口監督の影響を受けてるのでは無いでしょうか。

ちなみに、入江監督とせいこうさんの対談記事です。シネクイントのぶろぐ!

しかし、2年ほど前まで、ほとんど映画の事を知らなかった僕は、黒澤監督作品何本かと小津監督の「東京物語」しか観て無かったし、そもそも恥ずかしながら溝口監督の名前も知らなかったです。「山椒大夫」という言葉は知ってましたが。

それで、映画を鑑賞後、溝口監督の事を色々と調べました所、明治生まれ<1989年(明治31年)~1956年(昭和31年)>だからか、Wikiを読む限り、ものすごい豪快な方なんですね。以下のまとめをちゃんと読むと結構、面白い(女性は引くかも)ので、興味ある方は読んでみて下さい。

どういう人物だったか?まとめ
・1925年(大正14年)に痴話喧嘩のもつれから、恋人であり同棲中の雇女に背中を剃刀で斬られるという事件を起こし、しばらく謹慎処分となる。
・背中の傷跡については「これぐらいのことをされないと、女は描けないよ」と自ら語っている。
・女性への暴言は有名、妻を発狂させるほど追い込んでもいる。
・田中絹子に対し、求婚の意思があったらしいが、彼女が映画監督をやることになったことを記者から聞かされて「田中の頭では監督は出来ません」と答え、これがもとで関係が冷却したといわれている。(しかし田中絹子に対してだけは、この発言以外は常に紳士的な態度だったとの事)
・若尾文子に対して決して名前を呼ばず「おい、子供」、「顔の造作が悪い」と罵倒した。
・名匠と呼ばれるきっかけを作った恩人でもあった入江たか子に対してすら、「化け猫ばかりやっているからそんな芸格のない芝居しか出来ないのだ」と満座の中で罵倒
・水戸光子に向かって、「あんたは輪姦された経験がないんですか!」 と言い放った。
・菅井一郎に向かって、「君は脳梅毒です! 医者に診てもらいなさい!」と暴言
・子役に向かって「この子はどうしようもないバカだね!」と言い、近くにいた母親が落胆。
・一方、会心の演技を見せた森雅之が「誰かタバコをください」と言った時に、自ら率先してタバコを差し出し、火を点けて労った
・他人に厳しいばかりではなく、自分にも厳しい人物であった。
・映画で使われた道具を内緒で自分のものにしていた
・自分の生活費の一部を映画の製作費から支払わせていた
・成瀬巳喜男の『浮雲』が話題になっていたとき、当時の助監督の熱心な勧めによって鑑賞したが、その助監督に「成瀬には金玉が付いとるのですか」と感想を語った
・『西鶴一代女』で家並みのセットを作ったところ、溝口がやってきて映画の中でさほど重要ではないにも関わらず「下手の家並みを一間前に出せ」といった。助監督はやむなく嫌がる大道具のスタッフに頭を下げて徹夜で作り直させた。翌日、セットを見て監督が元に戻せと言い、助監督は激怒して帰宅。(演出に行き詰って苦悩していた溝口が時間稼ぎに行った苦肉の策だったともいわれる)

口が悪いし、他人の物は俺の物というジャイアン的な部分もありますね。たまにいいとこ見せるのも、ジャイアンっぽい。今の世の中だと生きにくいかも知れないけど(当時でも、彼を尊敬する人達以外の周りのスタッフには、さすがに嫌われてたみたいですが)、こういう人は結構いたのかなぁとか思います。僕の祖父は大正生まれでしたが、非常に口が悪かったです。
とにかく、豪快というか基地外というか、現代の視点から見るとかなり規格外の人物と言うのが、伺えますね。
映画監督自体が、そもそもまとも(世間的な意味で)な人では、なかなか難しいのかも知れませんが。

そんな人ですが、ジャイアンの歌とは違い溝口監督の映画は、冒頭で触れた様に世界的に認められてまして、ヴェネツィア国際映画祭「銀獅子賞」2回と「国際賞」を受賞したり、カンヌ国際映画祭に出典されたり、「西鶴一代女」がBBC選出「21世紀に残したい映画100本」に選ばれたりしています。

溝口監督作の作風
・後年の作品においては1カットが数分に及ぶような長回しを多用した
・結果として流麗かつ緊張感にあふれた演出を編み出した
・女性を中心に据えた濃密なドラマの演出に才を見せる
・歴史劇製作に際しての綿密な考証によっても知られる
・役者に演技をつけずやり直しを命じ、悩んだ役者がどうすればいいのか訊いても、一切助言などをしなかった

また、スタッフも充実していて、宮川一夫(カメラマン)、依田義賢(脚本)、水谷浩(美術)、早坂文雄(音楽)といった才能あふれるスタッフが溝口組に参加していたみたいです。
ちなみに、水谷さんは日本では他のスタッフより知名度が低いが、反対にフランスでは水谷が一番有名で彼の手による溝口のデスマスクが、現在でも保管されているみたいです。

と、ついつい溝口監督のWikiに書いてある記述を丸写しに近い状態になってしまいました。
ただ、自分なりにまとめる事で、溝口監督を捉える事が出来るかなと思って、この様な記事になってしまいました。


それで、肝心の今作、「山椒大夫」についての感想なんですが、溝口監督の事に時間と行数を使い過ぎたので、簡単な感想にさせて下さい。古い名作ですし、僕なんかが語るまでも無く、たくさん今作について、語られてるブログなんかが、ありますので、興味ある方は、検索してみて下さい。

特に、「知の迷宮」と言う記事は、色々勉強になったので、読んでみて下さい。

溝口監督の他の作品を鑑賞した時に、またちょこちょこっと今作の事も書いていくと思います。

簡単な感想だけ書きますと、絵の美しさとかセンスの無い僕はちょっとわからなかったです。後、言われてる様に今作はそんなに長回しが目立ってなかったと思います。物語は非常に悲しくて、誰もが指摘するであろう安寿が水に浸かって行くシーンはすごいです。そして、ラストのシーンは、なんか本当にすごかったです。とにかく、面白い面白くないの軸じゃなくて、理屈で説明出来なくて感覚でしかありませんが、すごいなぁと思いながら鑑賞してました。そういうのは、僕のわからない美的センスとかの部分に知らず知らずに、凄みを感じたのでしょうか。

by eigasirouto | 2012-05-04 02:40 | 旧作(2012年鑑賞)

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